カズオ・イシグロ「夜想曲集」

カズオ・イシグロの「夜想曲集」を再読。出版順では「わたしを離さないで」の次の作品。

「老歌手」「降っても晴れても」「モールバンヒルズ」「夜想曲」「チェリスト」の5編からなる短編集。全て音楽をモチーフにして書かれている。



「老歌手」ベネチアの街で往年の大歌手トニー・ガードナーと出会ったギタリスト。トニーからある頼みをされる。妻のいるホテルの窓の下のゴンドラから愛の歌を唄いたいので伴奏をして欲しいというのだ。
「降っても晴れても」友人夫婦を訪ねる主人公。その妻とは昔、音楽の趣味が一緒だった。友人は夫婦の危機を迎えていて、主人公に助けを求める。
「モールバンヒルズ」売れないミュージシャンの主人公は作曲をするために、カフェを営む姉の家に居候する。カフェを手伝っていると、そこにミュージシャンの夫婦が現れる。
「夜想曲」売れないサックス吹の主人公が、顔の整形手術を受ける。療養のため滞在しているホテルの隣室には有名人のリンディ・ガードナーがやはり療養のため宿泊している。二人は交流を深めるのだが。
「チェリスト」ティボールは伸び悩んでいるチェリスト。ある日、エロイーズ・マコーマックという女性と知り合う。エロイーズが優れたチェリストであると感じたティボールは教えを請うようになる。だがエロイーズはなぜかチェロに触れようとしないのだった。

ネタバレあり

「降っても晴れても」以外はミュージシャンの話である。だが、まだ売れていなかったり、全盛期を過ぎていてもう一花咲かせようとしたりしている。基本的にはまだ諦めていない人たちだ。だから悪戦苦闘している。喜劇であり、裏を返せば悲劇だ。どの話も主人公の心の中はドタバタしている。だが、作者の書き方が落ち着いているため、ドタバタ劇にはなっていない。ジャッキー・チェンが主演で映画化されれば凄いドタバタコメディになりそうな気もするのだが。
「老歌手」のトニー・ガードナーの別れた妻が「夜想曲」のリンディ・ガードナーである以外は、どの話も関連はなさそうだ。だが「夜想曲」の主人公も「チェリスト」の語り手もサックス吹きだ。ゴッドファーザーのテーマ曲が「老歌手」と「チェリスト」で演奏される。「老歌手」と「降っても晴れても」の両方でシナトラが軽くディスられてる。などなど、探してみると重なり合うような事象が鏤められてる。



この本は夜寝る前に一編ずつ読むのに適しています。

P.S.カズオ・イシグロの本はすべて早川書房から出ています。ノーベル賞を受賞したので今は目立つ所に平積みされているかもしれませんが、そうでなければ、文庫コーナーの一番隅を探してみて下さい。ほとんどの本屋ではそこが早川書房の定位置です。


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