市に虎声あらん(まちにこせいあらん)

フィリップ・K・ディックの「市に虎声あらん」を読了。
大学生の頃、ディックの本を読み漁ったものだ。ブレードランナーの原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」はもちろん、「流れよわが涙、と警官は言った」「ユービック」「ヴァリス」「高い城の男」「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」等々の長編から短編集まで本屋で未読のものを見つけては買い漁った。残念ながらそれらの本は今手元にはない。引っ越しの際、実家に蔵書を送ったのだが、いつの間にか処分されてしまっていた。親という人種は物の価値が分からないから困る。
閑話休題
図書館で翻訳物のコーナーをうろついていたら見つけたのがこの「市に虎声あらん」である。前述のようにディックの本はほとんど読んだと思っていたのに初めて見る本である。奥付を見ると初版が2013年となっている。ディックの遺稿が発見されて今頃出版されたのかと思ったが、調べてみると未刊の処女作だそうである。
物語は1952年ジム・ファーガソンのエピソードから始まる。ファーガソンは電器店「モダンTV」のオーナーである。続いて「モダンTV」の従業員であるスチュアート・ハドリーのエピソードが語られる。ハドリーはエレンという妻がいてまもなく子供も産まれる。だがモラトリアムな考えが頭を占めていて、現状に満足できていない。そのため酒に溺れたり、宗教団体「イエスの番人協会」のリーダー、セオドア・ベックハイムに救いを求めようとしたりする。ハドリーの現実逃避とも言える行動が、やがて事件を引き起こす。
小説の前半部分では、ファーガソンとハドリーのどちらが主人公であるのか分かりかねた。どちらのも同じように筆が割かれていたからだ。後半部分ではハドリーの行動に重点が置かれるようになる。言ってしまえば、この本は迷える若者の顛末記である。
ディックの本といえばSFだ。だからこの小説もSFだと思って読み始めた。教祖ベックハイムが何か奇蹟を起こす物語だと思ったのだ。ところがこれは普通小説だった。読み進んで、かなり戸惑った。自分の思い込みがいけなかったのだが。
ハドリーの心境に共感できれば、面白く読める本である。

ディックのSFは数多く映像化されている。今年一番の楽しみはブレードランナーの続編ブレードランナー2049の公開である。前編のもやもやしたところが解決できるのか、あの世界観がまた見られるのか。期待を裏切らないで欲しいものだ。


そしてアマゾンプライムで高い城の男が映像化されている。これも時間を作って見てみたい。


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